鰓過呼吸

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【ゲーム感想:Owlboy】ピクセルアートという名の芸術作品

この記事に含まれるもの:Owlboyのネタバレなし感想
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だいぶ前に買ったきり積んでいたOwlboyを先日クリアしたので感想を書いていきます。

Owlboyはフクロウの少年オータスが、空に浮かぶ大陸を自由に飛び回り冒険する2DアクションADV。開発に8年以上もの歳月がかかっていることでも知られています。
その特徴は何と言ってもスーファミやPSのソフトを彷彿とさせる美しいピクセルアート。
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登場人物の表情、揺れる葉の1枚1枚、内装の細かな部分まで緻密に描かれていて、開発に長い時間がかかっていることも納得の素晴らしいクオリティです。

インディーゲームは「これを表現したい!」「ここを見てくれ!」という制作側の熱い叫びが聞こえてくる作品が多いですが、
Owlboyに関しては「とにかくこの美しいグラフィックを見てくれ!」という叫びが聞こえてきそうな、そんなデザインの作品だなと感じました。

オータスはフクロウ族なので空を飛ぶことができ、フィールドを上下左右に移動しながら進んでいくのですが、
美しいフィールドを自由に飛び回るのはさながら一種のアートを楽しむかのような体験ですし、余すところなく見て回ることができます。

youtu.be

音楽についても同様で、トレーラーのこの曲はトロポスというフィールドのBGMとしても使われている曲なのですが、
初めて聞いたときは音楽の壮大さと画面の美麗さに鳥肌が立ちました。
しかしながら全体を通して思わず口ずさんでしまうようなメロディアスな曲は少なく、サントラを購入して聴くことが最適な曲たちではありません。ゲームをプレイしながら聴くことに意味のある音楽です。
曲単体で見れば好みは分かれるかもしれませんが、そもそもピクセルアートの美しさを引き立てるための曲であるとすれば、正しく完成されたものであると感じます。

ストーリーについてですが、温かみのある世界観とは裏腹にシリアスでハードな展開が続くように感じました。
eショップの説明の「心温まるストーリー」かどうかは人によって感じ方が異なるかな…?という印象です。
また、設定が難解で、専門用語が出てきてもよく説明されないまま話が進んでしまい、「○○って何だっけ?人の名前?発明品の名前?」と混乱してしまうこともしばしばありました。
旅の記録のようなテキストが用意されていれば、より理解しやすかったかもしれません。
ただ、サブイベントも含めて演出面には光るものがあり、キャラクターの表情の変化が丁寧に描かれていて、セリフ回しもセンスが良く、思わず涙してしまうような場面もありました。
ここでもピクセルアートの素晴らしさが良い作用をもたらしています。

また、日本語訳も大変レベルが高く、キャラクターの個性を引き立てるのに一役買っていてとても好印象でした。


★★★
ここまでアート面に触れてきたのですが、ゲームプレイに関する面についてです。

本作のジャンルはアクションADVですが、「アクション」のうち敵と戦う要素の占める割合は30%くらいで、
残りは謎解きが40%、敵の目をかいくぐって進むが30%、という感じです。

オータスは空を飛ぶことは出来ますが、有効な攻撃手段を本人はほとんど持ち合わせていないので(せいぜい敵を気絶させるくらい)、仲間を持ち上げて運び、代わりに攻撃してもらうことになります。

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仲間はオータスにぶら下がるような感じに

この、空を飛び仲間を運びながら敵と戦うというのがこのゲームのアクション面における特徴なのですが…操作が複雑でかなり苦労させられました;
まず、「人に話しかける」「ドアを開閉する」といった調べる系全般の行動をするのがZLボタンなのですが、「仲間をつかむ」「障害物をつかむ」のもZLなんです。
そして攻撃がZR、仲間を自分のもとにテレポートさせるがX、右スティックで攻撃の標準を合わせ、LとRで仲間を切り替え…と、
敵に囲まれたときには頭が混乱しまくりですw
特に右スティックでの標準合わせはきっちりやらないと攻撃が全然通らないので、左スティックで攻撃を避けながらBボタンでダッシュしながら右スティックを敵に向けて動かしながらZRを押し込むという大忙しな操作をすることになります。
そもそもオータス一人で移動している時から、Aボタンでジャンプしている間に再度Aボタンを押すと飛行、飛行中にAボタンを押すと飛行をやめるという仕様に中々慣れず、飛びたくないときに飛び、飛びたいときに飛行をやめることが何度もあったくらいなので、
雑魚ラッシュの場面やボス戦では結構な回数リトライしました。
キーコンフィグが出来ればもう少し何とかなったような気もしますが、残念ながら出来ないのでとにかく慣れるしかありません…。

また、操作性に加えてもう1つ問題なのが、オータスたちの強さに対して敵が強すぎる面です。
ほとんどの敵は攻撃してもノックバックしないにも関わらず、オータスが攻撃を受けると掴んでいる仲間を手放してしまうだけでなく激しくノックバックして、受け身を取れないと壁に叩きつけられてさらにダメージを受けます。
無敵時間もあってないようなものなので、一度攻撃を受けたが最後、その辺のザコ敵にも永遠にノックバックされ続けハメ殺されることもしばしばありました。
攻撃を受けると画面が激しく明滅するのもあり余計に見づらく、混乱します。
敵を倒してもアイテムを落とすということもないので、無視して進もうと思っても、エリアを超えてどこまでも追いかけてくるので、
もう一旦死んで回復しよう…とわざとやられることも多かったです。
こまめなオートセーブとペナルティなしのリトライの速さがなかったら、途中で心折れていたかもしれません。

決してアクションの難易度が理不尽に高い、というわけではなく、操作性の複雑さのせいで結果的に必要以上に難しくなってしまっているのはかなり惜しいポイントだと思いました。
ボス戦についても、ただ攻撃するだけでなく倒し方を閃くことが必要で、その点はかなり面白いと感じただけに、ハメ殺しの連続だったのが残念でなりません。


謎解きに関する面ですが、これはかなり楽しめました!
基本的に一本道のダンジョンを、仕掛けを動かしながら進んでいくのですが、仲間を重り代わりにしたり、ギミックを高い位置に運んだりと、
この作品ならではのアクションを活かしたもので、難易度も程良く、面白かったです。
仲間ごとに使える武器と壊せる障害物が違うので、使い分けながら進んでいくのも良かったです。
ただ、仲間が全員揃うのが終盤に入ってからなので、せっかくの仲間切り替えの面白さが味わえる時間が非常に短いのはもったいないなぁと思いました。


もう一つ気になったのは、ワープやファストトラベルの類が一切使えないことです。
収集要素として「ブキャナリィコイン」というものがあり、一定数集めることでHPを増強したり、仲間の攻撃を強化したりすることができます。
このコインは各地に決められた数が隠されているので、一度クリアしたダンジョンでも、取り逃したコインを集めたくなったら再度赴くことはありえます。
そういった時にいちいち同じ道を通って行くのは中々に不便でした…。
また、地図もないので「○○へ向かおう」と言われてもそれどこだっけ…どっち方面だっけ…となりがちでした。
もっとも、多少寄り道がある程度で基本的に一本道のストーリーなので、よほど時間を空けてプレイでもしていない限り詰んでしまうほどの問題にはならないとは思います。



★★★
後半は結構不満点について書いてしまったんですが…10時間〜程度のゲームプレイで、個人的には少なくとも良作であることは間違いないと感じました。
アート面そのもの・アートの良さを引き立たせる要素については非の打ち所がないと言っていいです。
実際にゲームを進めていくのには、やや不便だったり必要以上に難しかったりするところがあるのは残念なのですが、
ピクセルアートの美しさを体験する」というゲームなのだということを念頭に置いてプレイすれば、最大限楽しめるゲームなのではないかなと思いました。