【ゲーム感想:A Short Hike】優しい世界のオープンワールド山登りADV
この記事に含まれるもの:A Short Hikeのネタバレなし感想
こちらのダイレクトで紹介されていたA Short Hike、クリアしたので感想を書いていきます!
A Short Hikeは、ローポリで描かれる温かみある世界でハイキングを楽しむオープンワールドADVです。
のんびりプレイしても3時間程度でクリアできる短編作品になっています。
★★★
主人公のクレアは、都会に住む鳥の女の子。夏休みを利用して、豊かな自然と雄大な山々をたたえるホークピーク州立公園にやってきます。
何やらふさぎこんでいる様子のクレアは、誰かからの電話を待っているのですが、あいにく山のふもとは電波が通っておらず、圏外状態。
パークレンジャーを務めている叔母のメイに尋ねると「山頂付近なら電波が入るかもしれないよ」とのこと。
ホークピークトレイルの頂上を目指してクレアのひと夏の小さな冒険が始まる…というストーリーです。
★★★
クレアは鳥なのでグライド=高いところから滑空することができるのですが、スタート時点では高く羽ばたいたり山肌をよじ登ったりすることはできません。
そこで必要になってくるのが「黄金の羽」というアイテム。これを集めることで空中ジャンプの出来る回数が増え、壁登りできる時間が長くなっていきます。
「黄金の羽」は売店での購入や、誰かの頼み事を聞いたお礼として入手できる他、羽がない・少ない状態では行けなかった標高の高い場所に隠されていることもあります。
手持ちの羽が少ない序盤こそ、ある程度行動範囲に制限がありますが、だんだんと行ける場所が広がっていくことがとても楽しく、わくわくさせてくれます。
また、公園を巡るのに決められた順序はなく、自由に進めることができるのもオープンワールドならではで、とても魅力的です。
★★★
あらすじの通り最終目標としては「山頂を目指す」ことではあるのですが、ゲームオーバーやHPの概念もなく、同じ山登りでもCelesteのような高度なアクションの技術を求められるものではありません。
すぐに山頂を目指さなくても、釣りをしたり、雄大な景色を楽しんだり、宝探しをしたり…のんびりとした時間を過ごすことができます。
公園にはクレアの他にもたくさんの観光客やここで働く動物たちがいます。
彼らの頼みを聞いてあげたり、一緒にロッククライミングに挑戦したり、一緒にボートに乗ったりして交流することが出来るのですが、そのやり取りはどれも温かく、優しいものばかりです。
特にビーチスティックボールという、棒を使ってボールを打ち返しラリーの回数を競うミニゲームでは、上手く出来なくても一緒にプレイする子が「良いスタートだったね!」等と優しい言葉をかけてくれます。
日本語翻訳の質の高さも相まって、こういった優しくほっこりするテキストが随所にあり、自然と皆ともっと交流したいという気持ちにさせてくれます。
クレア自身も、公園に来た当初こそふさぎこんでいる様子でしたが、言動からとても心優しい子であることがわかり非常に好感が持てます。
操作方法等を教えてくれるNPCも存在しますが、例えば「ここは○○村だよ」と主人公に伝えるためだけに生まれた村人A、というようなキャラクターはいません。
頼まれごとをされるでもなく、ただクレアと噂話をしてくれるだけのNPC等、仮にいなかったとしてもゲームの進行に直接関わらない子もいます。
ただ、皆がそれぞれに自由な時間を過ごしているのが「ふらっとやって来た自然公園で、出会った人たちと他愛ない会話をする」という雰囲気作りに一役買っていて、物語への没入感を高めてくれています。
また、明るくも穏やかなBGMも非常に良く、音楽による演出も光るものがあります。
一度登頂を終え、ほとんどの頼まれごとをクリアした後も、何となくまたプレイしたくなる…もとい、ホークピーク州立公園での時間を過ごしたくなるのは、そうやって丁寧に練られた世界観があるからなんだな、と感じます。
★★★
ボリュームこそ3時間程度で終わる作品ではありますが、読後感ならぬゲーム後感は、ひとつの短編小説を読み終わったような満足感があります。
操作も難しくないので、普段あまりアクションゲームをやらない人も含め、誰もが楽しめると思います。
楽しさや優しさ、温かさが濃い密度でギュッと詰まった素敵な作品です。
Switch版の売れ行きが大変好調だそうですが、もっとたくさんの人に素晴らしさが広まるといいなぁと思わずにいられません…!